森林には本来、多様な機能があります。もちろん木材供給などの生産活動もありますが、それ以外に、生物が生息するビオトープであり、光合成によるCO2固定と酸素供給、景観維持、土砂災害防止、水を蓄える、保養や教育の場となる、といったような多面的な役割を持っています。アメリカやカナダ(日本も?)の林業が経済森林と環境保護を別々にするのと異なり、ドイツの林業は、森林の機能をすべて維持しながら生産活動を行うという方法をとっています。とりわけ都市部近くの森林では、災害防止などの観点から森林機能の維持が重要になります。
その森林を管理する役目として、公有林の林業を行い、私有林のコンサルティング(林業支援など)をしているのがフォレスター(森林官)です。デスクワークが8割で異動もある日本の森林担当の行政職員と異なり、ドイツのフォレスターは現場で林業経営をする専門職です。かつては貴族に仕えてハンティングや森の整備をしていました。実は、現在でも社会的地位の高い職業であり、子どもたちが憧れる職業としてトップ3に上がるそうです。死亡事故率が建設業の数倍と危険な職業でもありますが、フォレスターの働く姿を前面に出したキャンペーンの効果もあり、スポーツマンのような「カッコいい」イメージが持たれています。
よく日本は「資源小国」などと言われますが、実際には国土の3分の2以上が森林資源に覆われた「森林大国」です。日本とドイツの森林を比較すると、樹種の多さや木材の質では日本が優れています。
氷河期の時代、北半球では北から南に向かって気候が推移し、樹木などの植生はそれに伴って移動しました。標高の高い場所では生育できる樹種は限られるため、「山脈の向き」が東西方向であるヨーロッパでは気候の推移とともに南へ移動した植物が山脈に追いつめられて絶滅し、樹種が大きく減少しました。日本の場合、山脈はどちらかというと南北方向であるために同じような樹種の絶滅が避けられたのだそうです。ミズナラを例にすると、ヨーロッパでは4種のみ、日本では20種が見られます。
また、日本のスギなどは木材としての質が高く、ヨーロッパから見ると「うらやましい」と言われます。池田さんのレクチャーで、「日本でバイオマス発電のための林業経営は可能ですか?」と質問すると、「それは非常にもったいない」という答えが返ってきました。それだけ木材としての利用価値が高いということです。
日本の林業は衰退し、ドイツに比べて産業としての存在感は希薄です。しかし、資源である森林の豊かさにおいては日本の方がまさっており、それを生かせていないことに問題があると言えます。
現在の日本のスギやヒノキは戦後になって人の手で植えられたもので、間伐することを前提に密植されています。そのため間伐を行い、人が手を入れ続けなければ木は痩せ細って森林の機能は弱くなります。私たちがちょうどフランスに行っていたとき(11年9月)に近畿地方を直撃した台風12号による土砂災害も、写真などを見ると密生した木々が痩せているようであり、根を深く張れないために土砂崩れが起こりやすくなっていたのではないかと考えられます。
| 林業機械 |
0 コメント:
コメントを投稿