日本の平均耕地面積はだいたい1.0~2.0haと言われますが、フランスの平均耕地面積は40~50haぐらいで日本に比べて何十倍もあります。農業において「大規模」ということは、例えば土地を耕したり作物を収穫するための機械を買うと、小規模の場合に比べて同じ収穫量に対する機械のコストが小さくなります。大型の機械で一気に作業できるなら、農地の面積が大きいほど農作業は効率的で、農地が小さいほど機械のコストが無駄になってしまいます。
アルザスでは、特に南側のオー・ラン県で高速道路を走ると道の両側一面に何十~百何十kmという規模でトウモロコシ畑が広がっていました。キャベツやタバコなどもありますが一番大規模でよく見たのはトウモロコシです。たまにトウモロコシ畑の中に数十m~数百mほどある、車輪のついた細長いスプリンクラーのような設備が置かれています。とにかく大規模で、コストの問題なら日本と競争になるはずがないと率直に思いました。
それと白ワインの産地として有名なアルザスには「アルザスワイン」のためのブドウ畑が3,600平方㎞(30km×120km)にも広がり、その中を通る170kmもの曲がりくねったワインルート(ワイン街道)が知られています。緑輝く美しいブドウ畑は日当たりのよいボージュ山脈のふもとによく見られます。こうしたブドウやトウモロコシの大規模な農地はアルザスの町と町の間の景観となっています。
ただ、昔からアルザスの景観が大規模な農地だったかというと違うようです。アルザスはライン川を渡るとドイツのバーデン・ビュルテンベルク州ですが、ドイツ側にもトウモロコシ畑が多くありました。ドイツのフライアムトという村の農家へ(本来は再生可能エネルギーの視察で)行った際に「ここのトウモロコシ畑は昔からあるんですか」と聞くと「戦後にアメリカによって持ち込まれて、ほとんどは工業用です」と答えが返ってきました。確信があるわけではないですが、アルザスのトウモロコシも同じではないかと思います。今では当たり前のトウモロコシ畑の景色はそれまでなかったということになります。
また、カーヴ(ワイン農家)でアルザスワインについて話を聞いた際、この農家は「フェロモン剤」で害虫の繁殖を防ぐことで無農薬のブドウ栽培をしていると聞き、「昔はどうしていたんですか」と質問すると「小規模で自給自足的なワイン造りをしていた時代は防虫などの必要はあまりなかった」ということで、大規模農業はフランスでも昔から当たり前だったというわけではないことがわかりました。それに日本語の資料にはほとんどありませんが、アルザスのワインはもともと赤ワインだったようです。はっきりとしたことは聞けず正確ではないかもしれませんが、白ワインになったのは戦後からであり、それまではアルザスのワインは有名ではなかったということを言っていました。赤ワインのブドウ品種が病害虫により全滅したとも考えられます。
考えてみると、同じ作物だけを大規模に栽培するのは大変なことです。その畑に特定の害虫が入れば、大繁殖・大量発生して一気に作物が全滅する危険があります。そのリスクが大きい大規模農業は本来ならできないのが当たり前なのだと思います。それを可能にしているのは何かというと、ブドウにはフェロモン剤を使う以外に接ぎ木によって病害虫に強くする方法もありますが、問題になるのは「農薬」や「遺伝子組換え」です。何年か前には、フランスの遺伝子組換えトウモロコシ栽培が急増したというニュースがありました。
日本では今、TPPの議論の中で農業を大規模化することにより生産性を上げようと計画されています。コストの問題でアメリカやオーストラリアに少しでも近づくためです。ただ、考えなければいけないのは大規模農業が普通ではないということです。農業先進国でも本来の農業は自給自足か地産地消による小規模農業であり、大規模農業は人間が化学の力で自然を抑え込むことでもあります。自然に逆行せず環境を保全するという観点では、もしかしたら実際には日本の方がフランスよりも目指すべき理想の農業に近いと言えるのかもしれません。大規模化すればよいというのではなく、農業のあり方を見直すことから日本の農業問題を考えることが必要だと思います。
0 コメント:
コメントを投稿